後天性フォン・ヴィレブランド症候群に伴う小腸出血性病変の病態

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抄録

<p>【目的】生体内に過度のずり応力が生じる心臓弁膜症などにおいては、止血因子フォン・ヴィレブランド因子(VWF)高分子多量体の分解が亢進する。その結果、止血異常症である後天性フォン・ヴィレブランド症候群(AVWS)を発症し消化管粘膜血管異形成が生じ、時に出血を来すが、詳細な病態は不明である。本研究ではAVWSによる消化管出血の病態を明らかにすることを目的とする。</p><p>【対象・方法】単施設・前向き検討(UMIN000038948)。AVWSの症例として、2020年1月から当院にて経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)の適応となる重症大動脈弁狭窄症(AS)患者で貧血(Hb<11g/dl)を有する症例を対象とした。TAVI施行前後に小腸カプセル内視鏡を含む全消化管内視鏡検査とVWF多量体定量値解析を施行し、粘膜血管異形成・消化管出血の頻度などを検討項目とした。</p><p>【結果】対象は50例、男性/女性;13/37例、年齢中央値85歳、Hb中央値は9.7g/dlであった。TAVI前、92%に消化管血管異形成を認め[小腸67%、大腸47%、胃26%(重複あり)]、12%に活動性消化管出血を認めた。VWF高分子多量体インデックス平均値(±SD)は、82.7(±19.5)%であった。TAVI前に消化管血管異形成を有しTAVI6ヶ月後に解析しえた35例においては、Hb中央値は11.1g/dl(p<0.0001)、VWF高分子多量体インデックス平均値(±SD)は111.4(±16.4)%(p<0.001)と、TAVI前と比較して有意に上昇を認めた(p<0.001)。さらに小腸血管異形成を有する割合(p<0.05)、血管異形成の数(p<0.05)ともにTAVI前と比較して有意に低下していた。</p><p>【結語】AVWSでは高率で消化管血管異形成を認め、高ずり応力の解除によりVWF機能が改善し、消化管血管異形成が退縮、消失する可能性が示唆された。</p>

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