「アントニオーニにとっての“シンチェリタ”とは何か(1)」

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タイトル別名
  • What Is “Sincerità” for Antonioni ?(1)
  • アントニオーニ ニ トッテ ノ"シンチェリタ"トハ ナニ カ(1)

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抄録

"シンチェーロsincero"およびその名詞形"シンチェリタsincerità"は,映画史上かつ文化史上,もっとも重要な監督のひとりであるミケランジェロ・アントニオーニ(1906-2007)の愛用語だった。アントニオーニは,生涯,これらの語を使って自身の生き方や作品,他の監督やその作品を評価した。"シンチェーロ"を伊語辞典は「行動や発言などにおいて,感じていること,考えていることを,絶対的な真実をもって表現する」,と定義している。アントニオーニは"シンチェーロ"を,「思考」との関連を重視しながら,この定義に沿って使用し,時折はラテン語"シンケールスsincerus"に遡る,「率直な文体を指す(包み隠さない文体,考えを直接的に表現する文体)」という意味を重ねた。本稿は,これらの諸点を確認したのちに,『新天地』(ロイド監督作,1937)からQuintet(アルトマン監督作,1979)に至る,他の監督たちが制作した映画10 作品について,アントニオーニが"シンチェリタ"という概念を使いながら具体的にどのように批評したかを検討したものである。なお,この概念のアントニオーニ自身の作品に関する使い方については,次回取り上げる。

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