バーヴァナー理論における行為主体の定義と働きについて

  • 斉藤 茜
    Post-doc fellow, IKGA Austrian Academy of Sciences, PhD

書誌事項

タイトル別名
  • The Operation of Grammatical Agent (<i>kartṛ</i>) in the Theory of <i>Bhāvanā</i>
  • The Operation of Grammatical Agent (kartr) in the Theory of Bhavana

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説明

<p> パーニニによる動詞語根の定義を出発点として,文法家は〈成立の過程にあるもの〉(sādhya)と定義された行為(kriyā)を巡る議論を高度に洗練させていった.彼らの行為論とは先ず第一に動詞論であるが,行為の概念は動詞語根についての考察だけに収まるものではない.一般的な文法学の知識からも行為を成立させる要素,即ちカーラカ(kāraka = sādhana)の働きが行為の概念と切り離せない関係にあるのは明らかである.そして文法家と同様言語哲学の観点から,にも拘らず文法家のそれとは対極にあるバーヴァナー理論として行為論を発展させたミーマーンサー学派にとっても,彼らがパーニニ文法学を遵守する以上カーラカは等しく重要な意味を持つ.ではバーヴァナー理論に則り,行為を表示するのが動詞語根ではなく人称語尾(tiṄ)であるとした場合,カーラカと行為との結びつきはどのように理論化され,また文法家のカーラカ理論についてどのような不備が指摘されるのか.このようなカーラカへの注目及び文法学説との差別化が意識的になされるのは,シャバラ・クマーリラではなくマンダナミシュラ(660–720?)の『バーヴァナーの分析』(Bhāvanāviveka 以下 BhV)を待たねばならない.マンダナはバルトリハリ・クマ―リラ・プラバーカラ各人の行為論及び命令論を批判しながら,バーヴァナー理論で核となる行為主体(kartṛ)・行為対象(karman)・作具(karaṇa)の再定義を試みている.本稿ではその内特に「行為の統轄者」とされる行為主体を取り上げ,マンダナがまさにこの議論において〈行為主体の働き〉(kartṛvyāpāra)と呼ぶようになるバーヴァナー即ち〈行為〉が,行為主体とどのように関連づけられるのかを検討する.</p>

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