注釈書の利用における実例及びその課題――<i>Dīghanikāya</i>の批判校訂版を作成するツールとして――

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  • Examples and Issues of the Usage of the Commentaries: As a Tool for Creating a Critical Edition of the <i>Dīghanikāya</i>
  • Examples and Issues of the Usage of the Commentaries : As a Tool for Creating a Critical Edition of the Dighanikaya

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抄録

<p>パーリ語注釈書は,仏教学のみならず,古代インドの歴史,文化,言語など,多様な分野の学者に有用な情報を提供する膨大な資料集と言える.特に,パーリ三蔵の批判校訂版を作成する際には,その重要性がさらに高まる.本論文は,Dīghanikāyaとその注釈書であるSumaṅgalāvilāsinīに焦点を当て,シンハラ文字,ビルマ文字,コーム文字,そしてタム文字による,四つの貝葉写本伝承から収集した45本の貝葉写本に基づき,パーリ三蔵の新批判校訂版の作成作業において,例を挙げながらどのように注釈書を利用するのかを説明する.</p><p>注釈書の利用方法に関しては,少なくとも四つ挙げられる.①「校訂版の目指すところとして」利用する.パーリ三蔵の校訂版の作成目的は,できる限りその原本に遡ることにある.しかし,長時間にわたって成立しつつ伝承されてきたパーリ三蔵の場合,その原本が流動的なものであり,どのパーション,またはどの時代の原本を目指したら良いかという問題がある.そこで,多くの学者が同意するのは,ブッダゴーサが注釈書を編纂した時には,パーリ三蔵が我々が見る現在の形に,既に固定されていたはずだということである.ここから,再建されるパーリ三蔵のテキストは,マハービハーラ派の原本をその目標とする.②「注釈書における聖典引用」を利用する.最適な条件下では,その引用部分はブッダゴーサが当時見たもののはずである.③「注釈書の説明文」を利用する.そして④「注釈書に見いだされる古異読」を利用する.</p>

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