中学校の調理実習におけるハンバーグの教材としての可能性

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タイトル別名
  • The possibility of cooking class using Hamburg steak in Junior High School

抄録

研究目的<br>ハンバーグは中学校家庭科の調理実習において教材として採用される頻度が高い料理である。三田ら(1975)によってハンバーグの調理実習を成功させるための着目点も明らかにされている。肉を扱う調理実習の題材として、ハンバーグは調理科学の要素が多く長く教材とされてきたが、家庭科の時間数が限られていることや、1時間で調理実習を行う必要からハンバーグを教材とする調理実習は実施されにくくなってきている。<br>そこで、生徒がハンバーグの調理実習を通して何をどのように学んでいるのか、調理科学に関する知識の定着やその他の学習の成果を明らかにすることを本研究の目的とした。<br><br>研究方法<br>対象とした授業は2017年11月~2018年3月に静岡県東部公立中学校1年生2クラス60名(男子29名、女子31人)に実施した「ハンバーグを作ろう」である。本研究での分析データは1.質問紙調査と2.生徒のワークシートにおける記述の2つである。調査にあたっては、対象生徒に対して事前に研究目的等を説明し了承を得て行った。<br>1.質問紙調査:授業前(2017年11月)と授業後(2018年3月)の2回に同一の質問紙調査を実施した。質問項目は、調理科学に関する知識の定着度をはかる問題である。ハンバーグの作り方における調理科学に関する9の設問に、選択肢4つの中から回答を求めた。<br>2.調理実習後に生徒が記述した感想:生徒がワークシートに記述した調理実習の振り返りの内容をデータとして、カテゴリーを生成、分類して検討を行った。<br><br>結果と考察<br>1.調理科学に関する知識の定着度の正答率は、9つ全ての設問で向上し、9問の問題に対して事前33.3%から61.1%に上昇した。<br>特に正答率の高い設問は(7)肉を人数分にわけ、『ハンバーグ』の形を作るまえに、自分の両手を使って、肉を何回か左右にうちつけるようにするのはなぜか:83.3%(50人)、(5)ひき肉に卵を入れてこねるのはなぜか:78.3%(47名)、(9)ハンバーグでは初めに中火で焼き、こげ目をつけるのはなぜか:71.7%(43人)であった。<br>正答率の低い設問は、(8)ハンバーグの形は、小判型にして真ん中をへこませるのはなぜか:38.3%(23人)、(2)みじん切りにした玉ねぎをいためて、さましてからひき肉にいれてこねるのはなぜか:40.0%(24人)であった。<br>2.調理実習後に生徒が記述した感想からは、達成感、習得した調理科学に関する知識、調理プロセスへの振り返り、協力、観察、味などのカテゴリーが生成できた。<br>達成感のカテゴリーには「できるか不安だったけどうまくいってよかった」、「やった感(やりきった感)がある」、習得した調理科学に関する知識のカテゴリーには「手袋に肉がよくねばりつき」、「空気をぬこうとパンパンとしたら形がくずれそうになった」、調理プロセスへの振り返りのカテゴリーには「分量もしっかり見た」、「もう少しくぼみを深くしておいた方が良い」、協力のカテゴリーには「自分のこと以外にも手伝った」、「班のみんなにききながらやった」という記述がそれぞれ見られた。<br>なかでも観察のカテゴリーには、「煮ているとさらっとしていたソースが思っていたようなソースになった」、「できあがりがふっくら」というように、生徒がハンバーグそのものをよく観察している記述と、「たまねぎのみじんぎりは、とても早くこまかくできたし、○○さんがすごい早さで包丁をうごかしていてビックリした」というように同じ班の仲間が行っていることをよく観察している記述がみられた。<br>また味のカテゴリーには、「しっかりと中まで火が通っていて、やわらかくてジューシーでおいしかった」、「厚さもあって、食べごこちが良くおいしい」、「とてもフワフワして、おいしい」といったように多様な「おいしい」の表現があり、生徒自身の日常生活での経験や味と結びついていることがわかった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845712999966080
  • NII論文ID
    130007472577
  • DOI
    10.11549/jhee.61.0_17
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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