ラットおよびマウス胚におよぼすActinomycin Dの催奇形作用の比較

DOI
  • 佐々木 博
    日本メルク万有株式会社試験研究所名古屋大学環境医学研究所

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タイトル別名
  • The comparative teratogenicity of actinomycin D in SD-JCL (Sprague-Dawley) rats and ICR-JCL mice

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抄録

Actinomycin DはStreptomycesの産生する強い細胞分裂阻害作用を持った抗生物質であり,悪性腫瘍の治療に用いられる.生化学的にはDNAと結びついてRNA,特にmessenger RNA合成を阻害すると言われている.本実験ではRNA阻害物質がラット,マウス胎仔にどのような影響を及ぼすかを検討する目的でactinomycin D 100-250μg/kgをSprague-DawleyラットならびにICR-JCLマウスの妊娠5-12日のいずれかに単一腹腔内投与し,妊娠末期に胎仔を取り出し観察した.1)ラット,マウスともに薬物投与翌日の母体の体重はかなり減少したが,妊娠末期の観察では,ラット母体に肝臓の分葉の消失および腹水の貯留が多数例あっただけで,マウスにはそのような変化は認められなかった.2)胎仔死亡率はマウスでは妊娠8日投与群が高く,ラットでは妊娠9日投与群が高かった.母体別の胎仔死亡率の分布ではラットよりマウスの方がいくぶん"バラツキ"が大きいように思われた.3)母体に対する毒性はマウスよりラットの方により強くあらわれ,ラットの250μg/kg投与群では母体の10%が死亡した.胎仔に対してはマウスの方がラットより毒性が強くあらわれ,特にマウスの200μg/kg8日投与群では全ての胎仔が死亡した.actinomycin Dに対してはラット胚よりマウス胚の方が死に易いようである.4)異常胎仔および異常の種類はラットの方が多かったが,生存胎仔に対する異常の頻度は150μg/kgおよび200μg/kgの8日投与群についてはマウスの方がはるかに高かった.異常としてはラットは中枢神経系,目の異常,腹壁破裂などが8日投与を中心にして,一層性の山としてみられたのに対し,マウスでは200μg/kg7日投与群に脳ヘルニアが2例,150μg/kg5日投与群に二分脊椎が1例のごとく異常の出現が一定した投与日に集中していなかった.ラットにしばしぼみられた頭蓋脊椎裂および外脳症はマウスでは1例もみられず,水頭症,水腎症はラット胎仔に多数例みとめられたが,マウスではまれにしか出なかった.口蓋破裂,口吻短小はマウスに多数例みられたがラットでは出なかった.5)骨格異常はラット,マウスともに椎骨,肋骨などの異常がおもで,外形異常を持った胎仔を骨格観察より除けば,頻度は低かった,

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