当院でのがん患者の妊孕性温存を目的とした精子凍結保存法の実態と同法を用いた不妊治療成績の検討

書誌事項

タイトル別名
  • Clinical outcome and analysis of sperm cryopreservation for male cancer patients
  • トウ イン デ ノ ガン カンジャ ノ ニンヨウセイ オンゾン オ モクテキ ト シタ セイシ トウケツ ホゾンホウ ノ ジッタイ ト ドウホウ オ モチイタ フニン チリョウ セイセキ ノ ケントウ

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説明

<p>医療の進歩によりがんサバイバーのQOLが重視され,がんサバイバーの妊孕性温存は重要な課題である.当院では,2001年よりがん患者を対象とした精子凍結保存を行ってきた.今回,過去17年間における妊孕性温存のための精子凍結保存の実態調査,それを用いた不妊治療の成績について検討した.【方法・対象】当院で2001~2018年2月までの間に妊孕性温存のため精子凍結を行ったがん患者369例のうち,凍結精子を不妊治療に用いた41例を対象とし,原疾患の内訳,化学療法の有無,精液所見,凍結精子を用いた治療成績について検討した.【結果】精子凍結を行った患者369例の年齢は14~53歳で,原疾患の内訳は,精巣腫瘍217例(58.8%),血液疾患89例(24.1%),その他63例(17.1%)であった.凍結精子を使用した症例41例であった.このうち,泌尿器科からの紹介で化学療法後の症例は,7.1%のみであったのに対し,泌尿器科以外からの紹介で化学療法後は53.8%であった.化学療法後の症例は全て精液所見が正常値以下であった.凍結精子の保存状況は49.9%が保存を継続しているが,50.1%は保存更新されず廃棄となっていた.凍結精子を用いてARTを行った夫婦は41組(11.1%)で,このうち40例に顕微授精が行われ,平均受精率79.4%,胚移植あたりの妊娠率47.6%,胚移植あたりの生児獲得率46.7%,患者あたりの生児獲得率70.7%と良好な成績であった.2018年4月時点で29組において42児を得ている.【結論】妊孕性温存のための精子凍結保存法の成果が明らかとなり,がん治療前に精子を凍結保存することの有用性が示唆された.がん生殖医療への関心・理解を高めるためには,産婦人科医が妊孕性温存治療としての長期凍結精子を用いた不妊治療の実態を把握して他科へ情報を発信していくことが大切である.〔産婦の進歩71(1):1-8,2019(平成31年2月)〕</p>

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