カドミウムによる腎近位尿細管でのABCB1トランスポーターの発現誘導
書誌事項
- タイトル別名
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- Cadmium-induced ABCB1 transporter expression in renal proximal tubular cells
抄録
<p>【目的】カドミウム (Cd) は、環境中に広く存在する有害重金属であり、コメなどの食品を介したCd長期曝露による健康影響が懸念されている。代表的なCd慢性毒性として腎近位尿細管障害が知られている。我々は、ヒト由来の腎近位尿細管細胞 (HK-2細胞) において、CdがグルコーストランスポーターであるGLUT4の発現抑制を介して細胞毒性を引き起こすことを見いだしている。腎臓には多くのトランスポーターが存在し、その中でもATP binding cassette (ABC) 多剤排出トランスポーターの1つであるABCB1 (ABC transporter subfamily B member 1) [MDR1 (Multiple drug resistance 1) とも呼ばれる] が、腎近位尿細管上皮の刷子縁膜に発現しており、疎水性、両親媒性およびカチオン性の生体異物の細胞外への排出に関わっている。本研究では、Cdによる腎近位尿細管細胞でのABCB1の発現変動を検討した。</p><p>【方法】HK-2細胞を40μMまでのCdCl2で処理し、Alamar blueアッセイにより細胞生存率を調べた。また、ABCB1のmRNAレベルをリアルタイムRT-PCR法で、P-糖タンパク質 (ABCB1遺伝子産物) レベルをウエスタンブロット法で測定した。</p><p>【結果および考察】HK-2細胞を40μMまでのCdで6時間処理した結果、ほとんどの細胞毒性は示されなかったが、24時間処理では約80%の細胞毒性が認められた。同条件のCdでHK-2細胞を6時間処理することによって、ABCB1のmRNAレベルが顕著に上昇した。また、P-糖タンパク質レベルも、6時間および12時間Cd処理によって増加した。以上の結果より、CdによってABCB1の発現が増加するとともにP-糖タンパク質の細胞内レベルも上昇することが明らかとなり、近位尿細管細胞における物質輸送に何らかの異常を引き起こす可能性が考えられる。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 47.1 (0), P-15S-, 2020
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390848647544943744
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- NII論文ID
- 130007898290
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可