妊娠期ヒ素曝露したマウス精巣におけるエピジェネティック及び精子形成に関連する遺伝子発現の変化

DOI
  • 鈴木 武博
    国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター
  • 野原 恵子
    国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Gene expression changes of epigenetic-related genes and spermatogenesis-related gene in the testes of F1 male mice gestationally exposed to arsenic

抄録

<p>【目的】有害物質の影響を受けやすいと考えられる妊娠期や乳幼児期における環境化学物質曝露は、様々な後発的影響を誘導することが懸念されている。ヒ素は発がんのみならず様々な健康被害をもたらす。最近、疫学研究によりヒ素曝露による精子の質の低下など男性の生殖毒性も報告された。しかしながら、これらの研究はヒ素の直接曝露の影響であり、妊娠期ヒ素曝露によるF1の生殖毒性についてはいまだ明らかになっていない。本研究では、妊娠期ヒ素曝露のF1生殖系への影響を調べるために、妊娠期ヒ素曝露を受けたF1マウス精巣におけるエピジェネティック関連遺伝子及び精子形成分化に関連する遺伝子の発現変化を検討した。</p><p>【方法】C3HマウスF0の妊娠8~18日に水または85 ppmの亜ヒ酸ナトリウム水を自由飲水させ、産まれたF1雄(対照群、ヒ素群)を16週齢で解剖し、精巣を摘出した。精巣からRNAを抽出し、リアルタイムPCRで各種遺伝子の発現を調べた。</p><p>【結果・考察】ヒ素群F1の16週齢の精巣において、DNAメチル基転移酵素Dnmt1の発現が対照群と比較して増加傾向であった。また、受動的脱メチル化に関与するTetについては、Tet1の発現が対照群と比較して有意に減少した。グローバルなDNAメチル化を反映するレトロトランスポゾンLine1のOrf1の発現が対照群と比較して有意に減少した。ヒ素群F1精子ではLine1を含めてグローバルなDNA低メチル化が観測されているが、本研究においては、ヒ素群F1の精巣はDNA高メチル化状態であることが示唆された。さらに、未分化型精原細胞のマーカーであるZbtb16の発現が増加していたことより、F1精巣では、DNAメチル化が変化し、精原細胞の分化のかく乱を介してF1精子形成に影響を及ぼしている可能性が示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390848647544999424
  • NII論文ID
    130007898337
  • DOI
    10.14869/toxpt.47.1.0_p-212
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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