メチル水銀によるセレンメタボリズム撹乱を介した抗酸化システム脆弱化機構

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タイトル別名
  • Methylmercury induces vulnerability against oxidative stresses via disruption of selenium-metabolism

抄録

<p> セレノプロテインP (SeP) は、肝臓で合成され血漿中に分泌されるセレノシステイン含有タンパク質である。SePは、トランスサイトーシスにより血液脳関門及び血液胎盤関門を通過し、対象臓器内での分解を経て脳や胎児にセレンを供給する。これまで我々は、環境中親電子物質であるメチル水銀と求核性セレノシステイン残基の共有結合、すなわちSe-水銀化を検出する新規アッセイを開発し、in vitroからin vivoでSePのSe-水銀化を確認してきた。本修飾はシステインへのS-水銀化と比較し強固かつ安定であり、低濃度のメチル水銀でも認められた。そこで本研究では、SeP KOマウスおよびヒト培養神経細胞SH-SY5Yを用いて、SePのSe-水銀化がもつ毒性学的意義の解明に挑んだ。</p><p> メチル水銀を含む魚粉混餌(通常食)を5週間摂取させたSeP KOマウスの脳をICP/MS解析したところ、WTと比較し脳内総セレン量が低下し、それに伴い総水銀量も有意に低下したことから、SePはメチル水銀の中枢移行に一部関与することが示唆された。次に、SH-SY5YにSePを処理すると、セレンを含む抗酸化タンパク質グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx) (GPx1および4) の発現量が増加し、過酸化水素やクメンヒドロペルオキシドの毒性に対する耐性が認められた。一方、予めSe-水銀化させたSePは細胞内に通常のSePと同様に取り込まれたものの、GPxは誘導せず、酸化ストレス耐性の増加も認められなかった。興味深いことに、細胞内に取り込まれたSePのリソソームでの分解速度 (半減期) は、Se−水銀化の影響を受けなかったことから、メチル水銀はSeP消化後に遊離されたセレノシステインからのリアーゼによる無機セレンへの代謝、すなわちセレンメタボリズムを撹乱することで、酸化ストレス脆弱化に寄与することが新たに示唆された。 </p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390851961199617536
  • NII論文ID
    130008073840
  • DOI
    10.14869/toxpt.48.1.0_p-3s
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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