<論文> 国吉康雄の作品の絵画空間にみる、カゼインを用いた制作を経験したことによる影響について : 1940年代以降の作品分析を中心に

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タイトル別名
  • <Research Paper> A Study of the Influence of Working with Casein on the Pictorial Space of Yasuo Kuniyoshi : Focusing on Post 1940s Works Analysis

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国吉康雄(1889-1953)の1940年代の作品には、1939年頃から制作に使用していたカゼインの経験によって、画風に変化が現われた。そこで、国吉の画業の変遷を辿り、特に1940年代以降のカゼインを使用した作品や油彩画について実見調査をもとに作品を分析し、カゼインを用いた制作の経験によって得た描画材の特性をどのようにその後の制作で実践し、活用していったのか、そして、絵画空間にどのような効果をもたらしたのかを考察した。1930年代の作品は、絵具による厚塗りやマチエールが施されており、室内風景や人物、静物などのモチーフが何かわかるように描かれていたが、1940年代になると、画風に変化が現われた。国吉のカゼイン画の特徴である、色彩の明度の高さ、透明色や薄く溶いた絵具の重層化による奥行や陰影表現、色面同士を並置することによる平面性の強調などが1940年代以降の油彩画にも見られるようになった。30年代の油彩画と比較すると、40年代以降の油彩画は、絵画空間が、色彩や描画材による効果によって、視覚的に奥行を暗示させるような表現になっているように感じた。これは、カゼインを用いた制作の経験によって得た描画材の特性を、油彩画で応用したことによるものではないかという結論に至った。

著作権保護のため、一部の掲載図版に墨消し処理を施しています。

収録刊行物

  • 芸術学研究

    芸術学研究 23 21-30, 2018-12

    筑波大学大学院人間総合科学研究科

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