地方消費地市場における木材流通の分化
書誌事項
- タイトル別名
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- The Differentiations in the Local Timber Market : On the different means of distribution and quality control in the local timber market in the Oita District
- チホウ ショウヒチ シジョウ ニ オケル モクザイ リュウツウ ノ ブンカ
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説明
近年,地方の住宅建築においても地域ビルダーのシェアが高まり,国産材の新たな加工流通体制を構築する上でその動向が大きな注目を集めている.本報告は,地域ビルダーとしての中堅工務店の活発な活動のみられる大分地区を対象に,地方消費地市場における製材品の流通構造を分析したものであり,その分析の結果は次のとおりである.1)一戸建住宅の建築の主たる担い手である大工工務店には小規模業者が圧倒的に多く,しかもそれらの擁する大工職人には高齢者が多く,平均年齢は40歳を超えている.2)事業所数の5%の中堅工務店が手掛けた建築戸数は全体の4割近くのシェアを占めている.また,これらの中堅工務店では若手の大工職人の参入がみられ,木材の規格寸法や乾燥,プレカット化など品質管理,原価管理についても関心が高い.3)大工工務店の使用水材の6~7割が外材である.また木材の仕入れ先は地区内の木材業者,中でも材木店が最も多い(55%).そのほか地区内では製材工場(20%強)と直需者市場(10%)があり,地区外業者からの仕入れは少ない.4)木材業者には材木店,製材工場,市売市場等の業態があり,小規模業者が圧倒的に多い.しかし,製材品の取扱量では,1割に満たない少数の上層業者が半分近くを取り扱っている.5)木材業者の製材品の入手先は自社製材,ついで市売市場(地区内),製材工場(県外主体)であり,また販売先は大工工務店などの直需者が6割で最も多く,用途別では在来型木造住宅向けが3分の2を占めている.6)上層の木材業者はそれぞれ特有の流通経路を形成し,品揃え,供給能力及び品質管理能力を高め,それによって中堅工務店(=地域ビルダー)との結合を強めている.7)地域ビルダーは,このような形で木材業者を選別化することによって,品質の高い木材を入手し,住宅の品質向上と販売力の拡大を図っている.8)地方消費地市場においても地域ビルダーの形成にともなって木材流通の分化の傾向が強まっており,地域産材の新たな加工流通体制の構築に当たってはこのような動きに対応したシステムの構築が課題となる.
収録刊行物
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- 九州大学農学部演習林報告
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九州大学農学部演習林報告 60 35-67, 1989-03-30
九州大学農学部附属演習林
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390853649692921600
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- NII論文ID
- 110001377099
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- NII書誌ID
- AN00055178
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- DOI
- 10.15017/10844
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- HANDLE
- 2324/10844
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- NDL書誌ID
- 3237663
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- ISSN
- 04530284
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可