『法句経』と『老子』をめぐる写本上の若干の問題について

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タイトル別名
  • 关于《法句经》与《老子》抄本的几个问题
  • Some Problems of Manuscript on the Chinese Dharmapada (the Faju-jing) and the Laozi
  • ホックキョウ ト ロウシ オ メグル シャホンジョウ ノ ジャッカン ノ モンダイ ニ ツイテ
  • ホックギョウ ト ロウシ オ メグル シャホン ジョウ ノ ジャッカン ノ モンダイ ニ ツイテ
  • 法句経と老子をめぐる写本上の若干の問題について

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抄録

大月氏の人支謙は、三国時代の呉において、多くの仏典を漢訳した。その中の一つ『法句経』はパーリ語『ダンマパダ』を原典とする(維本)が、一部分は支謙以外の人が『ウダーナヴァルガ』から訳したもの(竺本)である。維本では老子の言語である「恬惔」が訳語として用いられている。これは想爾注本『老子』から来ていると推測され、老子本来の意味を正しく継承している。支謙は仏典漢訳に当たって「恬惔」の他に老子老子「無為」「自然」「聖人」などの老子言語を多く用いた。これらは「守一」に見られるように、王弼の老子注を経由したものであると推定される。そして支謙は、原典に相当する語が無い場合でも、老子言語を使っている。支謙は王弼老子注から衝撃を受けたのである。これは、『法句経』の訳語「根原」が王弼注から来ていることにも明らかである。支謙はパーリ語経典『スッタニパータ』の「アッタカヴァッガ」をも漢訳している(『義足経』)が、その訳し方は、同じ訳者とは思えぬほど、『法句経』とは異なっている。その原因は、やはり王弼注の衝撃に求めるべきであろう。支謙は始め、六言の韻律で、老子の影響も受けずに、直訳に近い形で『義足経』を訳したが、王弼注の衝撃をうけてから、四、五言主の韻律で、老子言語を多用し、伝統中国に沿った形で『法句経』の翻訳を完成させた。しかしながら、王弼注も、老子本来のものを多く捨て去っているのである。

収録刊行物

  • 言語文化

    言語文化 8 (3), 485-518, 2006-01-20

    同志社大学言語文化学会

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