両心室・心房壁の著明な肥厚を呈した悪性リンパ腫の1例

  • 辻本 恵美
    獨協医科大学埼玉医療センター 超音波センター
  • 戸出 浩之
    獨協医科大学埼玉医療センター 超音波センター
  • 木村 紀子
    獨協医科大学埼玉医療センター 超音波センター
  • 本多 飛鳥
    獨協医科大学埼玉医療センター 超音波センター
  • 澤田 健太
    獨協医科大学埼玉医療センター 超音波センター
  • 板橋 裕史
    獨協医科大学埼玉医療センター 超音波センター
  • 小林 さゆき
    獨協医科大学埼玉医療センター 超音波センター

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Malignant Lymphoma with Remarkable Thickening of Both Ventricular and Atrial Wall
  • リョウ シンシツ ・ シンボウヘキ ノ チョメイ ナ ヒコウ オ テイシタ アクセイ リンパシュ ノ 1レイ

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抄録

<p>症例:80代男性.鼠径部腫脹を自覚し,他院で悪性リンパ腫と診断された.1か月後,下肢浮腫が出現し,体動困難のため当院へ入院した.</p><p>経過:入院時心電図で異常を指摘され,経胸壁心臓超音波検査(TTE)を施行し,両心室と心房壁の著明な肥厚を認め,悪性リンパ腫による心転移が疑われた.入院翌日から化学療法が開始された.第9病日のTTEで両心室と心房壁の肥厚は退縮した.しかし,第15病日に胸部X線で肺うっ血を認め,TTEにおける左室流入血流速波形(TMF)の拡張早期波(E波)と心房収縮波(A波)の比(E/A),E波と僧帽弁輪速度(e′)の比(E/e′)から,左室充満圧上昇が示唆された.がん治療関連心機能障害(CTRCD)の可能性が考えられた為,化学療法は中断された.第29病日のTTEで諸指標は改善した.</p><p>考察:悪性リンパ腫の心転移はまれではないが,心症状や心電図変化が乏しく発見されにくい.心転移は右心系に多いとされるが,本例は両心室・心房壁の著明な肥厚を認めまれな転移所見と考えられた.心転移を伴う場合,化学療法の早期段階で致命的な合併症を伴うことがあり,慎重に経過を観察することは重要である.</p><p>結語:心電図異常の精査としてTTEを行い,両心室・心房壁の肥厚を呈した悪性リンパ腫と診断された症例を経験した.経時的なTTE観察により治療による浸潤病変の消退とCTRCD発症の経過をとらえた貴重な症例と考える.</p>

収録刊行物

  • 超音波検査技術

    超音波検査技術 48 (1), 51-57, 2023-02-01

    一般社団法人 日本超音波検査学会

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