野生動物の捕獲記録に基づく存在確率の空間分布

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The spatial distribution of the probability of presence based on wildlife catch records
  • a case study of the raccoon, <i>Procyon lotor</i>, and the masked palm civet, <i>Paguma larvata</i>, in Kyoto City
  • -京都市のアライグマ <i>Procyon lotor</i> およびハクビシン <i>Paguma larvata</i> を例に-

抄録

<p>京都市は貴重な文化財を抱える歴史都市であり、同時に三方を山々に囲まれ、市内には大小さまざまな河川が流れる自然豊かな都市である。それゆえ多くの野生生物が姿を現すが、そのような現象が時に人間の生活に悪影響を及ぼすこともある。特にアライグマやハクビシンによる寺社等への被害は甚大であることから、京都市および関西野生生物研究所は共同で捕獲事業を展開してきた。捕獲地点の分布を見ると、市内中心部に少なく、周縁部に多いという偏在性が存在した。本研究では、この偏在性について、主に土地利用の側面から原因を明らかにすると同時に、統計モデリングを用いて市全域を対象とした存在確率の空間分布を求めた。 アライグマおよびハクビシンの出没地点は四季によって4つに分け、それぞれを在地点と定義した。独立変数は市街地面積率、樹林地面積率、農地・草地面積率、裸地面積率、水域面積率、平均傾斜角、人口密度と定義した。市街地面積から裸地面積まではLandsat8衛星画像から、水域面積は基盤地図情報から、平均傾斜角は国土地理院の10mメッシュDEMから、人口密度は1/8地域メッシュ人口総数から、それぞれ30mメッシュ(人口密度のみ50m)のラスタデータに変換して算出した。その後、フォーカル統計を半径30mから600mまで30m刻みに行い、各集計範囲内での割合を求めた。 次に、1000個のランダムポイントを擬似不在地点として生成し、在地点とともに土地利用面積率、平均傾斜角および人口密度のセル値を各ポイントに格納した。その後、在地点と擬似不在地点を合わせたテーブルを作成し、フォーカル統計の半径を変えてロジスティック回帰モデルを適用したのち、ステップワイズ変数選択で季節ごとに適合度の高いモデルを採用して存在確率の空間分布を求めた。 アライグマについて、採用されたモデルの半径は秋を除くすべての季節で180m以下に収まり、ねぐらから半径200m圏内を中心に行動している可能性が高いことが本研究で示された。独立変数には農地・草地面積率と水域面積率が必ず選ばれており、これらの変数がアライグマの出没を決定づける要因だと考えられる。ハクビシンについては、採用されたモデルの半径はすべての季節で150m以下に収まっており、アライグマ以上に狭い範囲で行動している可能性が示唆された。また、独立変数には共通点が少なく、土地利用以外の原因が偏在性をもたらしていると考えられる。 京都市内における存在確率は、京都御所や巨椋干拓地といった大規模な農地や緑地の近辺のほか、桂川などの大規模河川の周辺で特に値が高くなった。それゆえ、京都市においてはこれらの場所に出没する可能性が高く、住民へ被害等の聞き取りを行うと同時に、出没にいち早く対応できる体制づくりが必要である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858619526114560
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_275
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ