釧路湿原の保全と開発をめぐる水共生学アプローチ

書誌事項

タイトル別名
  • interdisciplinary Approach for Conservation and Development of Kushiro Wetland

説明

<p>特異な水環境である湿原は、洪水などの災害を緩和し、湿地性の生き物の生息地となるなど、水循環や生態系にとって多様な機能を有している。他方、湿原の一部が人間の生活圏と重なる地域も多く、開発の対象となって消失する、あるいは希少な生物の保全地区や観光振興の対象地として保全されるなど、湿原によって様々な変遷を辿っている。</p><p> 釧路湿原は、面積が約26,000haの日本最大の湿地であり、保全と開発の間で揺れ動いてきた。1980年に湿原の中心部が日本で最初のラムサール条約登録湿地となり、その7年後には湿原周辺を含むほぼ全域が国立公園に指定され、タンチョウヅルやイトウ、キタサンショウウオなどの希少な生物を保全する制度的な枠組みが設定された。他方、湿原とその周辺部では農地開拓が進み、保全と開発との間で住民を巻き込んだ論争が繰り広げられてきた。近年、釧路湿原の縁辺部では、太陽光発電のためのソーラーパネル設置が急速に進んでおり、その設置の是非をめぐり現地で新たな議論が生じている。 </p><p> 釧路湿原付近において代表される⽣物のひとつが、キタサンショウウオである。キタサンショウウオは⽇本においては釧路湿原付近でしか⽣息しておらず、環境省レッドリストにも登録されている種である。その⼀⽅で、釧路地域は⽇照時間が⻑く平地が多いことから太陽光発電の設置が急速に普及しており、キタサンショウウオの⽣息域が失われつつある。</p><p> 本発表では、水環境の変化を地球圏―人間圏―生物圏のゆらぎの観点から捉える水共生学の枠組みを、釧路湿原の太陽光発電をめぐる議論に適用し、水共生学の枠組みの有効性を検討する。また、人間圏の変化について、制度の側面に注目して釧路湿原縁辺部でソーラーパネルの設置が拡大した要因を明らかにする。そして、釧路湿原縁辺部において水共生社会を構築していく際の課題について、キタサンショウウオの保全やソーラーパネルの設置のあり方等に注目しながら考察する。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861618045899776
  • DOI
    10.11520/jshwr.36.0_51
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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