「地域を考えるための経済学」に関する一考察 : 「村の市場」と「公共性」

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タイトル別名
  • A Study of “Economics for the Community
  • 「チイキ オ カンガエル タメ ノ ケイザイガク」 ニ カンスル イチコウサツ : 「ムラ ノ シジョウ」 ト 「コウキョウセイ」

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説明

本稿の目的は、これからの地域の問題を考える上で欠かせない概念である「公共(性)」に焦点を当てることによって、新古典派経済学以外の思考方法に依拠する「地域を考えるための経済学」について構想することである。19世紀前半から中葉にかけて興隆した自由主義思想では、「公」と「私」の領域が厳格に区別される一方、19世紀後半に登場した新自由主義思想においては、「大不況」期における「貧困観の旋回」を背景に、新たに「公共」の領域が出現した。しかし、同時期に産声を上げた新古典派は、このような思想上の変化を無視した。「厚生経済学の基本定理」に見られるように、相変わらず「公」と「私」の領域を厳格に区別する思考に則っていたのである。新古典派は、「村の市場」と「グローバル市場」を同一視するという特殊な空間概念を背景に、国家間・地域間における「グローバルな収斂」を主張した。他方で、新古典派に依拠しない「地域を考えるための経済学」を構想するためには、近世ヨーロッパの農村でカルヴァン派信徒が従事した「隣人愛の実践」や、20世紀末のフランスでジョゼ・ボヴェたちが行った「農業文化」を尊重する運動が参考になる。取引する者同士の顔が見え、取引される商品の出所情報が共有されるとともに、地域への帰属意識などを表す「社会的価値」を内在する商品が取引される、「村の市場」という公共空間の重要性を示唆してくれるからである。

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