直売所への水産物出荷が漁家経営に与える影響

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  • A Study of Influence on Fisher’s Business Management by Shipping Fishing Products to Farmer’s Market
  • チョクバイショ エ ノ スイサンブツ シュッカ ガ ギョカ ケイエイ ニ アタエル エイキョウ

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抄録

<p>農水産物直売所は,零細な生産者の重要な出荷先として位置づけられ,地域によっては農産物と同じく小規模漁業者の重要な出荷先の一つとして安定した地位を獲得するに至っている。水産物直売所の先行地域と言ってもよい福岡県を対象として,出荷先選択と経営効率(生産性)の二つの面から直売所が漁業経営に与える影響について明らかにした。第一に,漁業者は直売所と卸売市場への出荷について,商品嗜好性に合った漁獲物の出荷先選択を行っていた。この使い分けは直売所と卸売市場の双方に便益を与えている可能性がある。多品種少量で消費者が直接購入するのに適した魚種,すなわち卸売市場の取扱いに適さない魚種が直売所に出荷され,結果的に卸売市場には多量に漁獲されロットとしてまとまる魚種が出荷されることになる。第二に,直売所出荷には市場出荷以上の多大な経費が投じられており,また,通常の労働に加えて多大な労働が付加されていた。直売所出荷の営業利益は出ているものの,市場出荷という選択肢から生じる機会費用を控除するとわずかであり,直売所出荷が圧倒的に有利ということではない。ただし,自家労賃は漁家内での潜在労働力を顕在化させて価値実現につなげている点を考慮すると,費用としての自家労賃は大きいものの決してコストエンジンということではなく,漁家における家族労働の価値実現である。</p>

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