国家が管理する捕鯨

書誌事項

タイトル別名
  • Whaling administered by a nation
  • 国家が管理する捕鯨--フェロー諸島における捕鯨の実態と捕鯨がになう多面的な役割
  • コッカ ガ カンリ スル ホゲイ フェロー ショトウ ニ オケル ホゲイ ノ ジッタイ ト ホゲイ ガ ニナウ タメンテキ ナ ヤクワリ
  • Whaling in the Faroe Islands and its many-sided roles
  • フェロー諸島における捕鯨の実態と捕鯨がになう多面的な役割

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抄録

<p>本稿の目的はフェロー諸島で行われている国家管理による捕鯨の実態を記述し,捕鯨が島民のなかでどのような役割を担っているかを考察することにある。フェロー諸島では,ゴンドウクジラの自給的捕鯨が連綿と行われてきた。フェロー諸島の捕鯨の特徴は,1)国家管理である点,2)ゴンドウクジラの季節的で気まぐれな来訪にまかせるいわば受け身の捕鯨である点,3)伝統的な技法を用いる点,4)諸島民に鯨を平等に配分する点があげられる。</p><p>捕鯨とその用具,配分は法規で決められている。鯨が発見されたならば,地域単位で編成された船団が湾に鯨を追い込み捕獲する。捕鯨に使用される資本は既存資本を援用し,伝統的な用具を使用する。捕獲した鯨の配分は,捕鯨で中心的な役割を果たした人びとと公共施設への配分が優先され,残りはその他の参加者,地域住民に対して平等に行われる。</p><p>配分量は,当然のことながら,鯨の群れの大きさと配分を受ける人口に規定される。鯨の群れが小さかった場合,鯨は公共施設に譲られる。フェロー諸島の人口が増加したため,一人あたりの地域配分の割合は低下した。このため,鯨製品を希求する人びとは,減少分を参加報酬によって捕填しようとするであろう。捕鯨の伝統的で単純な技法は多数が捕鯨に参加することを可能にしている。</p><p>フェロー諸島における捕鯨は,地域社会の人びとが自然のサイクルに従い,伝統を再現し維持する場であり,弱者優先かつ平等な配分が行われる場でもある。このようにフェロー諸島の捕鯨は,島民を国家,自然,伝統のなかに位置付ける役割を担っていると考えられる。しかし,近年の島民の消費生活の多様さや鯨の化学物質汚染の指摘は,フェロー諸島の捕鯨のありかたに変化をもたらすとも考えられる。</p>

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