更年期及びその周辺婦人の記憶機能に関する臨床的研究
書誌事項
- タイトル別名
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- A Clinical Study on Memory Function in Climacteric and Periclimacteric Women
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説明
更年期以後の婦人は, 種々な程度の物忘れを訴える。エストロゲンが女性の記憶機能に影響を与えるという報告がある。しかし, 女性の更年期に関連して年齢層別に記憶検査を行って, 記憶力低下があるかどうかを報告した文献はない。本研究は, 次の二つを主な目的とした。更年期及びその周辺婦人に関して, 1) 記憶力低下があるかどうか。2) もし記憶力低下があるとすると, それは, 卵巣からのエストロゲン分泌が減少する更年期開始の年齢層やエストロゲン分泌が消失する閉経期の年齢層と関係があるかどうか。1), 2) を明らかにするために, 獨協医科大学越谷病院産婦人科外来受診中でかつ通常の日常生活を送っている, 31~65歳の婦人200名について三宅式記銘力検査を行って検討した。200名を5歳ごとに年齢層で区分して, A~G群に分けた。A~F群は各群30名で, G群は20名であった。各群の記憶力は, 無関係対語3回目の正答数を代表値として, 分散分析後多重比較した。A群 (31~35歳) とB群 (36~40歳) の正答数 (平均±SD) は, それぞれ8.0±2.0, 8.2±1.7で, 有意差は認められなかった。この両群は, 残りのいずれの群よりも高値であった (p<0.01)。C群 (41~45歳) とD群 (46~50歳) の正答数は, それぞれ5.9±2.1, 5.6±2.4で, 両群間に有意差はなかった。E (51~55歳), F (56~60歳), G (61~65歳) の各群の正答数は,それぞれ4.5±2.4, 4.2±2.2, 3.3±1.6であった。C群は, E~Gの各群より有意に高かった (p<0.05)。D群は, F, Gの両群より有意に高かった (p<0.05)。E群はG群より有意に高かった (p<0.01)。以上をまとめると次のようになる。B群からC群に移行するところで記憶力低下は最大であった。更年期には, C群とE群で記憶力低下が認められた。前者は, 血中エストロゲンの周期的変化が減少ないし停止して, 更年期が開始する年齢層に一致していた。後者は, 閉経期の年齢層に一致していた。更年期以後も緩徐に記憶力低下が進行した。
収録刊行物
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- 日本産科婦人科學會雜誌
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日本産科婦人科學會雜誌 46 (3), 271-276, 1994-03-01
日本産科婦人科学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1542261570195905408
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- NII論文ID
- 110002108947
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- NII書誌ID
- AN00190060
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- NDLデジコレ(旧NII-ELS)
- CiNii Articles