ヒト産褥初期における Prolactin 分泌の神経内分泌調節機構に関する研究

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  • Study on the Neuroendocrinological Control of Prolactin Release in Early Puerperium

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抄録

産褥初期における神経内分泌学的なProlactin(PRL)分泌調節機構の解明を目的に、視床下部・下垂体系における内因性のdopamine、histamineおよびopioid pathwayがPRL分泌に及ぼす影響について検討した。妊娠38~41週に分娩をした産褥14日目までの72症例を対象とし、dopamine antagonistのmetoclopramide(MCP)、dopamine agonistのbromocriptine(BRC)、TRH、histamine H_2-receptor antagonistのcimetidine、opioid antagonistのnaloxoneを用いて、母体血中PRLの変動を検討し以下の知見を得た。 1)MCP10mgまたはTRH500μgを1回静注投与すると、母体血中PRLは有意(p<0.001~0.02)に上昇した。MCP投与群のPRL増加値(ΔPRL)の頂値(447.0±62.3ng/ml)は、TRH投与群の頂値(278.3±65.1NG/ml)に比し有意(p<0.05)に高かった。 2)BRC(5mg/day)服用群では、血中PRLはTRH500μg静注後有意(p<0.001)に上昇した(ΔPRL頂値235.9±33.2ng/ml)が、MCP 10mg静注後は低値のままで有意な上昇はみられなかった。 3)Cimetidine 400mgを1回静注投与すると血中PRLは有意(p<0.05)に上昇した(ΔPRL頂値86.5±27.3ng/ml)が、BRC投与によりその反応は抑制された。 4)Naloxone 1mgを1回静注投与しても、血中PRL動態に有意な変化はみられず、またnaloxone投与後に静注投与したMCPやTRHのPRL上昇作用にも、naloxoneの影響はみられなかった。 5)MCP、TRH、cimetidineは、同時に測定した17β-estradiol、progesterone、cortisol動態に有意な影響を及ぼさなかった。以上により、産褥初期視床下部・下垂体系のPRL分泌機構に対し、MCPとTRHは有意な効果を与えるがその作用機序は異なり、histamineはH_2-receptorを介して抑制的に作用し、内因性のopioid peptideやそのreceptorは促進的な役割を果たしていないことを示した。

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