酸エッチング後あるいはレーザーエッチング後のエナメル質に対する矯正用接着剤の接着性の比較検討

  • 遠藤,敏哉
    日本歯科大学新潟歯学部歯科矯正学教室
  • 長谷川,優
    日本歯科大学新潟歯学部歯科矯正学教室
  • 鈴木,洋
    日本歯科大学新潟歯学部歯科矯正学教室
  • 亀田,晃
    日本歯科大学新潟歯学部歯科矯正学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Adhesion of bonding materials to enamel : Comparison between the use of acid and lasing as pretreatment

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説明

Nd : YAGレーザー(レーザー出力 : I群-66 mJ, II群-133 mJ)あるいはリン酸(III群)によるエッチング後のエナメル質に矯正用接着剤でブラケットを接着し, その接着性および接着機構について比較し, ダイレクトボンディング法の前処理としての有用性を検討した.そして, 次の結果を得た.1. 破断荷重値はI群, II群, III群の順に有意に大きくなり, I群, II群の破断荷重値はそれぞれIII群の32.5%, 51.7%であった.2. レーザー照射面積を考慮すると, レーザーエッチングは酸エッチングと同程度あるいはそれ以上の接着強さを得る可能性があることが理論上(計算上)示唆された.3. エナメル質の被着面の観察の結果, I群, II群は照射領域のエナメル質表面がガラス状に滑沢になり, 大小不同の不定形な多数の小孔や亀裂が散在していた.III群では選択的にエナメル小柱体部あるいはエナメル小柱周囲が脱灰されていた.4. 圧縮剪断接着試験後の破断面の観察の結果, I群ではエナメル質面の界面破壊が大部分で, 一部接着剤の凝集破壊が認められたが, II群ではエナメル質面の界面破壊が減少し, 接着剤の凝集破壊が増加し, ブラケット面の界面破壊も観察された.III群ではブラケット面の界面破壊や接着剤の凝集破壊が大部分であった.5. エナメル質内部への接着剤の浸透状態の観察の結果, すべての群で樹脂含浸エナメル質と接着剤の浸透硬化層が認められ, これらの幅はI群が約20μm, II群とIII群が約35μmであった.以上の結果から, ダイレクトボンディング法の前処理として, レーザーエッチング法は有用であることが示唆された.また, 本法の臨床応用に際しては, さらにレーザー照射の方法や条件, 接着耐久性, 歯髄あるいは歯周組織への影響, 接着剤除去後のエナメル質の性状, 適した接着剤およびその接着機構などについての検討が必要であろう.

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