高校家庭科における福祉生活課題解決能力の育成 : 参加型アクション志向学習による学習者の思考の変容プロセス

書誌事項

タイトル別名
  • To Enable Students to Solve Problems of Welfare for Themselves : The evolution of learner's thinking during action-oriented learning strategies
  • コウコウ カテイカ ニ オケル フクシ セイカツ カダイ カイケツ ノウリョク ノ イクセイ サンカガタ アクション シコウ ガクシュウ ニ ヨル ガクシュウシャ ノ シコウ ノ ヘンヨウ プロセス

この論文をさがす

抄録

参加型アクション志向学習を取り入れた授業実践を分析した結果,学習者が福祉問題を自分のこととして捉えて,課題をみつけて,福祉生活課題解決能力を育成するために,思考の変容に作用するものとして3点があげられる。1)知的障害者との交流体験学習は,障害者理解に効果的で,思考の変容に最も大きな影響がある。2)「自分が障害者になったら」を想定することは,障害者福祉を自分のこととして捉えることに役立ち,福祉生活課題解決を真剣に考える上で効果的である。3)ラベルトークは生徒の自己開示に役立ち,KJ法AB型の一連の作業による創造体験は自己変革を促し,障害者理解から内省的実践・解放的行為に向けて,学習者の思考の変容に効果的に作用する。以上の結果から,福祉生活課題解決能力の育成のために導入したアクティビィティ(学習活動)は,教師側が意図する一応の目標水準に適合し,参加型アクション志向学習は,内省的実践・開放的行為に効果的に作用することが明らかとなった。しかしながら,授業内容が深まって真剣に考えれば考えるほど,理想と現実の社会の困難性を感じ取っている生徒もいた。批判的思考により自分の内省的実践.開放的行為につなげることが目標であるが,障害者を理解し,福祉生活課題における社会システムの矛盾や葛藤を感じることも,将来の「共生社会」を担う若者にとって重要なことと考える。これからの「共生社会」に向けて,学校における福祉教育の役割は大きく,小学校,中学校の総合学習等で福祉教育を取り入れている学校もあるが,高校の家庭科は必修科目であり,福祉を扱う教科としてその責任は大きい。現在の限られた家庭科の授業時間で福祉教育に力を入れることは困難であるが,福祉教育における家庭科の位置づけを改めて問い直し,福祉教育実践が多くの学校で定着していくことを期待したい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ